さまざまな分野で身近に普及しているリチウムイオン電池や、次世代電池として期待されている全固体電池の研究開発では、より高品質・高性能を目指し、新たな分析・評価技術が求められています。 HORIBAは、電池材料の研究開発から生産管理、電池性能評価、電動車両開発支援まで、トータルの分析・計測ソリューションを提案しています。電池性能評価は、小型電池(単セル)から大型電池(電池モジュール/電池パック)まで幅広い電池の評価が可能です。



液系リチウムイオン電池と全固体電池の構造
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電池材料分析・劣化評価・品質管理


三元系正極材料(NMC)の劣化状態の観測


ラマン分光分析では、無機・有機化合物の分子構造や結晶性の違いを確認でき、光学顕微鏡で観察しながら、非破壊・ 非接触で結晶構造や分子構造の分析を行うことができます。ラマン分光分析でイメージングすることで、結晶構造を可視化し、劣化による電解質の変化を捉えることができます。

三元系正極(NMC)の劣化状態の観測
顕微レーザーラマン分光測定装置 LabRAM HR Evolution
無機・有機化合物の分子構造や結晶性の違いを確認でき、光学顕微鏡で観察しながら、非破壊・非接触で電池材料の結晶構造や分子構造の分析が行えます。

固体電解質粉末(硫化物系)の分析


硫化物系(Na2.88Sb0.88W0.12S4)固体電解質のラマンスペクトルの変化から、加熱後1.5/12時間後の電解質の 構造の変化とWS4が時間経過とともに増加することが確認できました。

硫化物系(Na2.88Sb0.88W0.12S4)固体電解質のラマンスペクトル
● In-Situ分析用セル
密閉した状態で充放電しながら電極のラマン分光分析が可能です。

固体電解質の構造解析


硫化物を用いた固体電解質は、その材料の高い導電率、加工のしやすさから全固体電池の固体電解質として注目されています。その硫化物ガラスは複数の構造を持つことが知 られており、ラマン分光分析なら目的の組成に対応する構造を取っているか、容易に識別が可能です。

顕微レーザーラマン分光測定装置 LabRAM HR Evolution

● 加熱・冷却ステージ
任意の温度での自動測定が可能です。

全固体電池 固体電解質の深さ方向分析


固体電解質中のLi分布を深さ方向に元素分析することで、リチウムが固体電解質表面に偏析していることがわかりました。 GD-Profiler2は、測定時の熱ダメージ低減機能により、Liなどのイオン化しやすい元素も安定した分析が可能です。

固体電解質中のLi分布を深さ方向分析プロファイル
マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置(GDS) GD-Profiler2
迅速に深さ方向元素分析が可能な表面分析装置として、めっき、熱処理、表面処理、コーティングなどの研究開発や成膜評価において活用されています。

トランスファーベッセル
● トランスファーベッセル
トランスファーベッセルを用いることで、グローブボックスから装置まで試料を大気非暴露で移動できます。

溶出した正極活物質の負極への影響分析


負極の劣化原因のひとつに溶出した正極物質の負極への影響が考えられます。 表面から集電箔までの全体と表面付近の拡大した元素プロファイルの取得をすることで、負極表面の劣化原因となる正極からの溶出物質である Mn や添加物成分から分解したと推定される S が多量に検出されました。 負極表面には SEI の主成分である C や Li の他に、正極から溶出したと推定される Mn や添加剤が分解付着したと考えられる S が多量に検出されました。

表面から集電箔までの全体と表面付近の拡大した元素プロファイル
マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置(GDS) GD-Profiler2

X線スペクトル分析結果からも、負極表面において、正極から溶出したと考えられる、Mn と添加剤の分解成分と考えられる S が検出されました。

X線スペクトル分析結果

左:電池の劣化により正極活物質中から溶出したと考えられるMnが負極全体に付着している様子が観察されました。
右:添加剤成分から分解したと推定されるSが、比較的高温になる電極端子部とエッジ部に偏在して付着している様子が観察されました。

負極表面の元素マッピング像
微小部X線分析装置 XGT-9000製品ページへ

硫黄含有固体試料中の酸素濃度測定


硫黄を含有している固体試料の酸素分析は、試料中のSと黒鉛るつぼ中のCが反応し、酸素の定量が困難でしたが、硫黄除去トラップ付きEMGA-930なら硫化物中の酸素測定が可能です。

材料組成分析構成
EMGA-930

大気非暴露測定用トランスファーベッセル
● 大気非暴露測定用トランスファーベッセル
大気に触れると大気中の水や酸素・二酸化炭素と反応し変質してしまう試料を、大気に触れさせずに測定できます。

正極材料中の炭素・硫黄濃度管理


炭素・硫黄分析装置EMIA-Expertでは、正極材料中の炭素濃度をppmレベルで管理できます。
また、電池の寿命や容量低下に影響する硫黄濃度も高精度に管理できます。

LiCoO2中の炭素濃度分析
材料炭素・硫黄分析装置 EMIA-Expert
新型 材料中炭素・硫黄分析装置 EMIA-Step製品ページへ
加熱温度可変機能で、全量分析だけでなく、温度別・状態別に分離させての定量分析も可能です。

● オートサンプラ

最大20検体までセット可能。 炉内の自動るつぼセットから測定後のるつぼ廃棄まで。


正極材料の複合評価事例


スラリー状試料のミキサー前後の分散状態を、高濃度セルを使った粒子径分布測定とラマン分光分析で比較しました。 高濃度セルでは、全体の粒子サイズの変化を、ラマン分光分析ではμmオーダで各成分の挙動が観察できます。

高濃度セルを使った粒子径測定結果,原液測定とフロー測定の結果

試料の混錬の違いにより、粒子径分布に差があることがわかりました。 高濃度セルを使えば、溶媒希釈による試料濃度で調節していた透過率を、光路長で調整することにより、高濃度試料でも希釈率を最小限で測定することができます。

多変量解析CLSによる成分分布,粒子の検出の例

ラマン分光法なら各成分の分散状態が可視化でき、さらに粒子解析ソフトウェアParticleFinderを使うと一粒子ごとに粒子径を自動測定できるため、ミキサー前後で数値による比較も可能です。

レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(粒度分布) LA-960V2 高濃度測定用セル
粒子解析ソフト ParticleFinder

スラリー状材料の混錬状態分析


混錬前はカーボンの凝集物と活物質の2つあった分布のピークが、混錬によって1つのピークになったことが確認できました。 この結果により、導電材であるカーボンの凝集がほぐれ、NCMのカーボンによる被膜が安定したと考えられます。

スラリー状材料の混錬状態分析
遠心式ナノ粒子解析装置 Partica CENTRIFUGE

電池活物質のコーティング評価


電池容量の改善について、活物質粒子表面に電解質を均一にコーティング処理をすることが有効であることが明らかになっています。 コーティング膜は薄く、粒子ごとに状態が異なるため、その状態を観察することは困難ですが、ラマン分光分析と粒子解析ソフトウェアを使用することで、一粒子ごとのラマン測定が可能になります。 各粒子のコーティング状態を可視化することはもちろん、粒子の自動認識機能を使った分析や、粒子径・形状情報の相関についても解析できます。

粒子解析ソフト ParticleFinder

粉末試料の分散処理


粒子分散ユニットは、試料台への粉末分散を容易にし、分析の効率化に貢献します。 人的誤差なく、簡単操作で瞬時に粉末粒子の分散が可能です。 ラマン分光分析やX線分析と組み合わせることにより一粒子単位での分子構造・成分分析が可能になります。

粉末試料の分散処理例
粒子分散ユニット

電極中の異物分析


電極中の異物は製品不具合を引き起こすため、数十μm程度の大きさのものを詳細に分析する必要があります。 XGT-9000では、その異物の元素、形状などを大気圧下で詳細に分析可能です。

微小部X線分析装置 XGT-9000製品ページへ
前処理なし、非破壊で簡単元素分析。微小な観察点も高精度な光学観察で測定ポイントに迅速アクセス。光学像・蛍光X線マッピング像・透過X線像による観察と分析がこれ一台で完結します。

● トランスファーベッセル
トランスファーベッセルを用いれば、グローブボックスから装置までの雰囲気を制御し、大気非暴露分析が可能です。

電極製造プロセスの測定

電極材料のミキシング流量測定例


「電極製造プロセスの測定」で紹介した製品は、以下のグループ会社のページからご覧いただけます。

堀場アドバンスドテクノ
堀場アドバンスドテクノ
堀場エステック
堀場エステック

バッテリー評価


安全性試験での発生ガス分析


高い安全性が求められるリチウムイオン電池は、さまざまな安全性試験が行われています。 例えば自動車の開発段階において、車載用リチウムイオン電池の釘刺し試験で発生したCOガスの車内流入がないかを測定し、安全性評価に貢献しています。 また、電池開発の加熱試験で発生するCOやCO₂などのガス濃度を、リアルタイムに測定できます。

電池釘刺し試験による車内CO測定,電池の加熱試験イメージ図
ポータブルガス分析計 PG-300シリーズ

充放電特性評価


バッテリ評価装置 Evaluator B

モデル開発・試作


バッテリモジュール/ パック開発支援


駆動系バッテリや定置用蓄電池の充放電特性評価が可能です。 駆動系のセル、モジュール、パックから定置用大型蓄電池に対応する充放電装置をラインナップしております。

HORIBA MIRAは、お客様のご要望に応じたより効率的で高密度なバッテリモジュール/パック開発支援を提供します。



「モデル開発・試作」で紹介した製品は、HORIBA MIRAのページ(英文サイト)からご覧いただけます。

HORIBA MIRA
HORIBA MIRA 詳細はこちら

最適化設計


xEV パワートレインの最適化に貢献する評価手法Test in the LoopTM


Test in the LoopTMにより、車両環境を模擬することで、車両システムに組込まれた環境でのバッテリの充放電特性や熱マネジメントといったバッテリ性能評価が可能です。 パワートレインに接続し、路上走行時の負荷をかけた状態での実機バッテリの充放電挙動や周囲温度を変化させた際のバッテリ性能を評価できます。

xEV パワートレインの最適化に貢献する評価手法Test in the Loop


* Test in the Loopは、(株)堀場製作所の商標または登録商標です。

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エネルギー材料分析・評価のトータルソリューション

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