HORIBAは65年以上もの間、NDIR(非分散型赤外吸収法)と呼ばれる赤外ガス分析技術を磨き続け、高精度なガス分析計を世の中へ送り出してきました。しかし近年の環境基準強化や産業の高度化によって、ガス分析計に求められる性能も多様化してきており、NDIR技術だけではお客様のニーズに応えることが難しくなってきました。
このNDIRの限界を打ち破るために私たちが注目した技術が、QCLです。QCLは、従来のNDIRとは桁違いに精度の高い分析計を作れる可能性を秘めています。
まず、私たちはこのQCLを自社で生産できるようにすることから始めました。HORIBAが提供する様々なガス分析計に対応するためには、QCLの発振波長を自由に調整することが必須で、自社生産するしかないと判断したのです。実は、HORIBAは、NDIRの性能を左右する最重要部品であるニューマティック検出器と光学フィルタを自社生産しています。 HORIBAが高品質な分析計を世に送り出せる理由の一つとなっている、この「コアコンポーネントは自社で作る」というスピリットを、QCLにおいても受け継ごうと考えたのです。しかし、それは簡単な道のりではありませんでした。QCLの製造には高度な半導体製造装置と製造技術が必要ですが、それらをゼロから作り上げねばなりませんでした。
そして苦心の末、試作したQCLが初めて光った時の感動は今でも忘れられません。それから約10年の時を経て、私たちはようやく、QCLを用いた新たな赤外ガス分析技術「IRLAM」を完成させることができました。
IRLAMの重要な構成要素には、光源であるQCLの他に、長い光路長を作り出せる独自のヘリオットセルがあります。このヘリオットセルもまた、社内で一から設計を行いました。応答性を向上させるため、セル内部の容積をできるだけ小さくする工夫を施しています。
IRLAM技術は、QCL・ヘリオットセル・濃度演算アルゴリズムの三本柱により、ポテンシャルの非常に高いガス分析技術として成立したといえます。 IRLAMが、ガス分析のどのような未来を開いてくれるのか大いに期待したいと思います。