
蛍光寿命の意味
まず,ごく簡単に蛍光寿命の意味について説明する。
図1(a)に示すように,蛍光分子が基底状態にある時,電子はS0と呼ばれるエネルギー状態にある。蛍光分子が光エネルギーを吸収すると,わずかフェムト秒のオーダで励起状態に遷移し,過剰なエネルギーを散逸して第1励起状態S1の最低次の振動レベルまで落ちる。この状態は励起過程で最も安定であり,滞在時間は数十から数ナノ秒が普通である。ここから基底状態に戻る過程で蛍光が発する。蛍光強度の時間変化F(t)は式(1)で与えられる(図1(b))。
ここで,F0はt=0における蛍光強度でτが蛍光寿命である。最初に励起状態にあった蛍光分子数に比べて,τだけ時間がたってもまだ励起状態にある蛍光分子数が1/e(約37%)になっていることになる(図1(b))。蛍光分子周辺の誘電率が高い時(親水的),あるいは近傍にエネルギー受容体があるとτは短くなる。従って,τを調べることで蛍光分子の周りがどんな環境にあるのかが理解される。

- 蛍光分子の電子状態と蛍光の減衰曲線
(a)蛍光分子の電子状態
基底状態(S0)にある分子は励起エネルギーを吸収し,励起状態S1やS2に遷移する。
最低次の励起状態S1から基底状態に遷移するとき蛍光が発する。
(b)蛍光の減衰曲線τは蛍光寿命を示す。
