
レーザパルス圧縮用回折格子の用途
レーザ・プラズマ相互作用による粒子の加速

- Figure 1 Chirped Pulse Amplification?CPA?technique using high performances diffraction gratings for pulse compression
HJYのパルス圧縮用回折格子を使用した超高強度レーザの主な用途の一つに粒子の加速がある。レーザ・プラズマ相互作用を用いた,超小型の粒子加速器の開発が研究者たちにより行われている。それらの小型加速器は,電子の加速において,数センチの距離で非常に高いエネルギー(1 GeV=10億電子ボルト)を得ることを目標としている。こうした超高強度レーザは世界各地で開発されており,例えばタレス社がローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)のために開発したBELLAペタワットレーザや,光州科学技術院先端フォトニクス研究所(GIST-APRI,韓国)が開発したPULSERペタワットレーザなどがある。
チャープパルス増幅(CPA)は,フェムト秒級やピコ秒級の高強度レーザパルスの生成に広く利用されている。高強度フェムト秒レーザの基本的な仕組みをFigure 1に示す。フェムト秒オシレーターにより,近赤外領域においてナノジュール級のエネルギーを持つ,繰返し率がMHzレベルの超短パルスレーザ光が生成される。フェムト秒オシレーターのみの使用では科学的用途が非常に限られるため,レーザエネルギーと強度の増大が必要となる。レーザ強度を高める際には,光学部品が損傷しないよう,レーザパルスの持続時間をフェムト秒からナノ秒へと引き伸ばす必要がある。
次に,複数段階にわたって光学増幅器を使用することで,ジュール級のエネルギーレベルが得られる。レーザの最終段階であり,最重要部にあたるのが,回折格子を用いたパルス圧縮器である。圧縮には2枚または4枚1組の反射型回折格子を使用する。高効率の大型回折格子が必要となるが,より高エネルギーの圧縮パルス生成に対して,レーザ誘起損傷閾値は主な制限因子となる。

- Figure 2 Picture of Multi-Layer Dielectric?MLD?grating?left?and Gold-coated grating?right?
真空室には,大型のパルス圧縮用ホログラフィック回折格子(金コート処理,または多層膜誘電体コーティング上にイオンエッチング処理,Figure 2参照)が2枚または4枚設置されており,これによりPeta Watt(PW:1015 W)領域のレーザ強度と,最大で1020〜1022 W/cm2にも達するエネルギー密度を実現する。これらの性能を達成するためにHJYはプロセスや性能の改善を続け,現在ではレーザコミュニティに超大型回折格子(高さ360×幅565×厚さ40 mm)を提案できるまでになった。

- Figure 3 P ulse Compressor vacuum chamber with four HJY goldcoated diffraction gratings
こうしたパルス圧縮用回折格子(PCG)の製造工程や特性化は,多くの時間が費やされ複雑なものとなっている。レーザシステムにHJYの大型パルス圧縮用回折格子を設置することにより,韓国のGIST-APRIチームはフェムト秒パルスを繰返し率0.1 Hzで1 PW[2]にまで圧縮することに成功している。これはこの繰返し率におけるレーザ強度の世界記録である。また,タレス社がLBNLのために開発したBELLAレーザの目標は,1.3 PW,繰返し率1 Hzのビーム生成である[3]。
2011年,高レーザ強度の生成を可能にするため,HJY製の大型パルス圧縮用回折格子が真空室に設置された(Figure 3)。HJY製パルス圧縮用回折格子は非常に高い性能・特徴を持つ。
- 90%を超える高い回折効率で貴重な増幅エネルギーを伝達
- 増幅されたスペクトルを保ち,フーリエ変換限界パルス持続時間まで再圧縮する広帯域性能(150〜200nm)
- 高い波面品質により回折限界スポットへのフォーカスが可能
- レーザシステムの最大エネルギーおよび最大レーザ強度に耐えられる,高いレーザ損傷閾値(LDT)
- 空気中でも真空中でも使用可能
- パルス圧縮器に設置しても長期間の使用に耐える
この種類の回折格子は,多様なレーザ構成に合わせたカスタマイズが可能である。
