測定の実際

固体試料は,顕微鏡観察できるようにスライドガラス上などに採取する。繊維・フィルムなどは測定中に動くため試料固定が必要である。粉体は対物レンズに付着しやすいので,平らにして高低を無くす。

液体試料は,透明で,十分な量がある場合,1 cm角セルが使用できるマルチパスセル(Figure 4:液体測定用ユニット)を使う。少量,高粘性,色が付いている液体はスライドガラスに1滴分取してそのまま測定する。カバーガラスを使いレンズへの液体の付着を避けるとよい。蒸発しやすい試料は,小さなカップに入れ,カバーガラスで蓋をして測定する。ガラス容器ごと測定したい場合,レーザ90°曲げユニット(Figure 5)を用いて,ステージ上に載せた容器の横からレーザを照射し測定する。

Figure 4 : Multipath cell attachment
Figure 5 : Liquid on sample stage measured with side illumination
system

厚みのある試料を測定する場合がある。当社装置に採用している光学顕微鏡BX41*1では,ステージ付け位置の調整ができ,28 mm以下の厚みであれば測定可能である。ローステージホルダ(オリンパス製)を使うと,50 mmの厚みまで対応できる。それよりも大きな試料を測定するのであれば,ステージではなく対物レンズ側が上下する光学顕微鏡BXFM*1搭載のラマン分光装置を選択するとよい。他には,加熱・冷却測定の場合は,光学顕微鏡用の温度コントロールステージ(Figure 6)を利用することができる。

Figure 7に水が低温で凍るときのラマンスペクトル変化を示す。試料温度制御は,コントローラだけでなくラマン用ソフトウェアLabSpec6から行うこともできる。同様に,湿度コントロールステージも利用でき,医薬品の水和による結晶構造変化の測定に利用されている。反応容器中の試料を直接測定したい場合は,ファイバープローブを利用することができる。

Figure 6? Temperature control stage
Figure 7: Water Raman spectra in various temperatures Spectra are in room temperature(Red), 0 deg(Purple), -20 degree (Green), -100 degree(Blue), -120 degree(Cyan)
Table 1? Selection of objective lense for the state of samples

対物レンズは,測定対象によって選択する。装置付属の対物レンズの場合の目安をTable 1に示す。凹凸のある試料には長作動対物レンズ,紫外(UV)および近赤外(NIR)レーザによる測定には,それぞれ適当なレンズが用意されている。対物レンズは同じ倍率でもNA(開口数)が大きいほど空間分解能が高くなる。焦点位置からの散乱光を集光する場合NAが大きいほど明るいので,シリコン結晶のように試料表面からの散乱光を集光する場合,100倍NA 0.9の対物レンズによって感度よく測定できる(Figure 8)。

Figure 8 : Variation of silicon Raman band intensity using several
objectives from NA=0.16 to NA=0.90
Figure 9 : Photoluminescence spectra of Silicon Carbide(SiC)Blue
and Green lines are by UVI 74x objective and NUV objective lens, respectively. The spectra were normalized at 380nm peaks.

 

一方,試料が透明な場合,焦点位置以外からも散乱光が発生するので,アスピリン結晶の場合では,倍率50倍NA 0.75のレンズの方が感度よく測定できる。液体セルを使った測定では,マクロレンズを用いる。この場合,共焦点ピンホールを開いて測定することでより高い感度が得られる。新製品の顕微対物鏡UVI 74x[15]は,反射光学系の採用により色収差が発生しないため,紫外(UV)から近赤外までの波長範囲で,ほぼ一定の透過率80%が得られる。レンズからの自家蛍光の影響も無く,広い波長範囲で回折限界近い高い空間分解能が得られる。LabRAM HR Evolution のように可視域に加えUVやNIR領域も測定する場合や,フォトルミネッセンスのように広い波長範囲にわたる測定には理想的な対物レンズと言える。

Figure 9に炭化シリコン(SiC)結晶のフォトルミネッセンス(PL)測定の事例を示す。UVI74x(反射対物鏡)の測定結果と比較して,NUV用対物レンズを使用したときは,色収差の影響により500 nm〜のイエローバンド強度が低下している。

 

*1: BX41,BXFMはOLYMPUS製光学顕微鏡の型式


 医薬品への応用