ラマン分光
ラマン分光法の歴史
- チャンドラセカール・ラマン
ラマン分光法は、1928年、インドのC.V.Raman博士によってラマン散乱が発見され、1960年の、ラマン分光にとって理想的な光源であるレーザーの発明によって、分析法としての地位を確かなものとしました。
ラマン分光法は物質にレーザーなどの単色光を照射したときに発生するその物質固有のラマン散乱光をスペクトルとして測定し、その分子・結晶構造に関する情報を得る分析方法です。 ラマン分光の原理はこちら
さらに、1970年代後半には光学顕微鏡との結合により、局所分析手法として多くの分野で使用されるようになりました。しかし、赤外吸収法(IR法)がフーリエトランスフォーム(FT)手法によって著しく進歩したのに対して、ラマン分光法ではその後長らく目新しい技術進歩がなく、測定時間の掛かる分析法と思われてきました。これは、ラマン散乱光が微弱なことと、僅かに異なる波長に強度の強いレーリー散乱光が存在するため、一般的なラマン装置には、ディテクタとして検出限界の高いフォトマルチプライヤ(PMT)と、迷光除去率の高いダブルモノクロメータが使用されていたことによります。
一方、時間分解等の分光用ディテクタとして利用されていたマルチチャンネルディテクタ(MCD)の性能向上は、CCDの採用により加速がつき、通常のラマン装置にも使用できるレベルになりました。これにより、従来の、モノクロメータをスキャンさせてはシングルディテクタであるPMTが一波長ずつの信号を取り込んでいた方法と比較して、MCDは同時にスペクトル全体を取り込めるため、測定時間の短縮に大きく貢献しました。
近年、ラマン分光法は、シングルモノクロメータタイプの顕微レーザーラマン分光装置の登場により飛躍的に感度が向上し、さまざまな分野の先端研究において、新しい分析プローブとして再び多くの研究者の注目を集めています。